ガバナンス対談

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  • 松谷 有希雄
    社外取締役
    松谷 有希雄 まつたに ゆきお
    コーポレートガバナンス委員会委員
  • 関口 康
    社外取締役
    関口 康 せきぐち こう
    コーポレートガバナンス委員会委員
  • 青木 芳久
    社外取締役
    青木 芳久 あおき よしひさ
    コーポレートガバナンス委員会委員
  • 三田 万世
    社外取締役
    三田 万世 みた まよ
    コーポレートガバナンス委員会委員
  • 松尾 嘉朗
    専務取締役
    松尾 嘉朗 まつお よしろう
    大塚グループサステナビリティ推進責任者
    大塚グループ・グローバル環境会議
    統括責任者
    リスク管理委員会委員
    コーポレートガバナンス委員会委員
  • 高木 修一
    取締役
    高木 修一 たかぎ しゅういち
    事業ポートフォリオマネジメント担当

(1) 当社のコーポレートガバナンス体制について

当社のコーポレートガバナンスの実効性について、お聞かせ下さい。

松谷
コーポレートガバナンスの実効性を高める上で、社外取締役の役割は大きく、客観的な基準も益々厳しくなってきていることを認識しています。大塚は人々の健康水準や生命力の向上に焦点を当てた幅広い分野の事業を展開していますが、それに合わせた各分野の多様な社外取締役を採用しており、現在の体制で議論の質としては一定以上のレベルを確保できています。監督業務というのは抽象的であるがゆえに、透明性が重要です。また、社内からの視点での監督とあわせて、社外役員には対外的な視点が求められます。対外的とは、投資家、取引先、消費者を含むあらゆるステークホルダーが該当します。現状の監督体制に特に問題はないと思っていますが、事業を行っていく中で、埋没してしまい対外的に見えなくなってしまう部分はないか、意図的に隠している部分はないか等を客観的にチェックする機能としても、社外役員の視点は重要だと認識しています。
大塚グループ全体のコーポレート機能を高めていくうえで、ホールディングスの形式をとった事は一つの大きな進化です。ただし、これからさらに良い方向へ進めていかなければなりません。単なる持株会社としての機能だけでは発展性がなくなっていく危険があります。各事業会社のチェックをしながら、それらの成長を促していく機能としては、まだまだ今の体系では十分ではないと考えています。大塚ホールディングスが発足してまだ10年余り。大塚全体の歴史は100年。事業を発展させる機能を有する会社として成長することを期待しています。

青木
大塚HDは、現在は監査役会設置会社で業務執行型の取締役会になっていますが、良い形で運営されていると感じています。監査役も社外取締役も、忖度のない率直な意見を言い合える環境にあり、各々の意見が尊重された判断がなされていると思います。このように実質的なコーポレートガバナンスの実効性は現時点でも保たれていますが、世の中全体の動きとしては、監督と執行を分離する形式を望む声がより高まっており、その動きを注視し、より良い体制を検討していくことは必要です。また、ガバナンスを適正に保つには、経営人材の育成が最も重要だと思っています。経営スキルの教育は勿論のこと、経営を健全に保つ「経営モラル」つまり「倫理観の醸成」にさらに力を入れて教育していくべきと思います。

三田
社外取締役比率は違和感のない水準であると認識しています。女性の取締役が13名中、3名とジェンダーのバランスも良く、女性の取締役のうち2名は社内取締役であることは大きな強みであると思います。一方、事業における海外の重要度が益々高まる中、海外事業に精通している人材の登用はさらに積極的に行うべきです。また、さまざまな事業を展開する上で、グループとしての長期的なビジョンは共有できるものの、各々の事業の環境変化や状況を子細に把握していくことは容易ではありません。そのため、事業目標や達成度合いをトラッキングができるKPIを各事業で定め、大塚HDで確実にチェックできる体制が重要だと感じています。これにより、事業のモニタリングやマネジメントはより効果的になるのではないかと考えます。

関口
コーポレートガバナンスの意義、ホールディングスとしての目的、使命は何か、それは即ち大塚グループの総合力をどうしたら最高な状態まで高められるか、だと思っています。その観点で、大塚グループの売上構成や今後目指すべき姿にとって最適な体制については、今後十分に議論し検討すべきだと思います。新型コロナウイルスの感染拡大、デジタル化の台頭など、事業環境は今、すごいスピードで変化しています。追いついていくだけでも大変ですが、追いついていくだけでは勝てない。グループの総合力をどうやったら発揮できるか、どのように時代を先取りしていくか、大塚の強みをどう出していくかということをオープンに議論でき、大塚として優先的にやらなければいけないかということを提案・議論できる場、皆の力を結集するための場が、今後益々必要でしょう。

高木
当社の取締役会は、複数の取締役が事業会社の経営陣を兼任している取締役が複数入っている、所謂業務執行型の体制をとっており、外部からの厳しい視点と、現場の専門知識とを合わせ、取締役会の場でスピード感を持って議論することができています。一方で、今後の大塚HDの機能について、現体制のままで良いのか、それとも違う次元の機能にしていくべきか、ということは検討の必要があると思います。

松尾
上場して10年、グループの総合力、上場企業として備えるべきコーポレートガバナンス体制は、強化・確立されてきたものの、本当の意味でのグローバル企業になっていくためには、まだまだ課題はあります。コーポレートガバナンスの在り方について、常々、取締役間で活発な議論を行っており、多様なバックグラウンドを持つ4名の社外取締役からも、さまざまな鋭い意見をいただいています。当社グループがさらに上のステージを目指すためには、コーポレート機能の更なる強化が必要です。グループのシナジー最大化を目指し企業価値を増大させることについて、一定の成果は出ていますが、目まぐるしい環境変化の中、単にキャッチアップするだけでは会社の成長はなく、進化のスピードを上げていく必要があります。中長期的に先を見据えグループ全体をリードしていくのがホールディングスの重要な機能であり、それを実現するためには、経営人材の育成や外部人材の登用も重要と認識しています。
社会に受け入れられ、社会的インパクトを与えることを前提とした企業価値の最大化を目指さなければならない。グローバル企業として世界に勝負できる体制に、我々の世代で整えなければならないと考えています。

(2) コーポレートガバナンス委員会について

当社は、取締役会の諮問機関として、取締役・監査役の指名、取締役の報酬体系・水準、その他コーポレートガバナンスについて審議するためのコーポレートガバナンス委員会を設置していますが、本委員会の状況や実効性についてお聞かせ下さい。

松谷
実効性は機能しており、今の段階では現体制で問題ないように思います。透明性と客観性についても、適切なプロセスを経ており、確保できていると考えています。一方、実質的に海外事業が売上規模の半分以上になっている中、海外展開に関してどうコントロールしていくのか、そこまでスコープを広げた体制としてはまだ十分ではないかもしれません。

青木
運営について特に大きな問題はないと思っています。現在委員長は樋口社長が務めていますが、事業構造が多岐にわたっているため、社外役員が務めるのは実質的に難しいと思っています。委員長を社外取締役が行うべきという考え方もありますが、私は内部に精通している人が、外部の意見を取り入れながら担当するのが現実的には望ましいと思っています。担当部署との意見交換会や、監査役との懇談会、重要案件については個別に情報提供の機会もいただいており、透明性や実効性については現時点で問題はないと思っていますが、グローバル事業のガバナンスについては、今後の発展も考えると、コーポレートガバナンス委員会とは別の仕組みづくりを検討する必要があるでしょう。グローバル化についてまだまだ課題があり、ガバナンスを強化していく必要があります。

三田
報酬体系に関して参考資料も提供頂け、他社比較の説明などもあり、透明性は高く、審議の際も活発な意見交換ができ、話もしやすいです。一方で、社外役員からの意見を体制や事業の仕組みづくりに落とし込むスピードが少し欠けている印象です。社会的にダイバーシティ&インクルージョンの重要性が高まっていますが、大塚は実事業をリードされている方々の中で女性が非常に活躍されている印象を持っています。女性が活躍できているのは偶然なのか、女性の登用、モチベーションの向上、女性同士のロールの共有、お互いのサポート体制など何か特別な仕組みがあるのか、その点についても議論したいと思っています。

関口
今後はさらにサステナビリティに関連した議論が増えていくことを鑑みると、指名・報酬とガバナンスを議論する委員会は別にしてもいいかもしれません。指名・報酬については、大塚グループを動かしている主要な人材が、ホールディングスの取締役以外にも多数存在しているため、大塚ホールディングスの子会社ガバナンスを強化する上では、場合によっては事業会社の重要なポジションにいる人材の人事についても、ホールディングスの中で議論をすべきでしょう。
現在のコーポレートガバナンス委員会は、社長が委員長を務められていますが、大変オープンな議論ができる場となっており、現時点では透明性等に課題はないと認識しています。

松尾
取締役、監査役の指名・報酬に関する議論に加え、多岐にわたるコーポレートガバナンスに関する議論を行うことを目的に、全社外取締役と社長、総務担当取締役で構成されるコーポレートガバナンス委員会が組織されました。当然サステナビリティに関する事案についても、議論を深める必要があると認識しています。委員会の役割も事業環境や社会環境に応じて変遷します。ホールディングスの役割も進化していくべきと考えています。

(3) 事業会社のグローバルガバナンスについて

当社グループは事業会社の多様性や独創性を尊重した経営を行っており、中長期的成長の実現のためにさらなるグローバル展開も推進しています。多角的な企業経営を行う中、持続的な経営全体の方向性の統一や整合性の確保に関して、どのような課題があるか、ご意見をお聞かせ下さい。

松谷
大塚は早いステージから海外展開をスタートし、長い歴史の中で事業としては地盤をかためてきた一方、ガバナンスという点においてはまだ途上段階でしょう。経営環境は地域ごと、国ごとに全く異なるため、一つにまとめていくのは大変難しいと思います。幸い、現場の努力により、現時点でそれぞれの事業は大塚の理念から外れていませんが、仕組みとしてはこれから強化していく必要があります。

青木
大塚の事業会社のグローバルガバナンスは、歴代の経営陣の優れた経営力とリーダーシップを以て牽引してきた感がありますが、ここまでグループの規模が拡大すると、ホールディングスと事業会社間、事業会社と事業会社間の体制を見直し、”Trust. But double check”の仕組みを新たな型としていく必要性を感じています。さらなるグループの拡大に耐え得る仕組みが出来れば、ガバナンスは維持され、グループの健全な発展が可能になります。そして、そのためにはやはり、「経営人材」の育成と多様化がグループ発展の鍵を握ることになると思います。

三田
企業理念のOtsuka-people creating new products for better health worldwideは普遍的でわかりやすく、海外の人も腹落ちしやすいと思います。一方、企業文化として掲げている流汗悟道・実証・創造性などはグローバルには理解し辛い人もいるかもしれません。トップの経営戦略実現には、各事業のKPIの設定、そして従業員への理解、浸透が重要で、それには現場との対話が欠かせません。メッセージが浸透することで納得感や連帯感も得られると思います。なお、戦略はこだわりすぎず、時代にあったものに変化させてもよいと思っています。
また、トップにグローバルな人材を据えるだけではなく、ファンクション間やグループ間の人材の流動性をより活発にすると、理解度も広がり、グループとしてスムーズなグローバル化が実現するのではないでしょうか。コーポレートプロジェクトや地域貢献についても、徳島や日本に限らず、世界に広げていけばグループの連帯感も得られると思います。大塚ブランドのさらなる浸透・展開にもつながることと期待します。

関口
分権経営は遠心力が働きすぎるとばらばらになるため、求心力も必要です。ガバナンスというかコントロールを強化すべきステージに来ていると考えます。総務・経理・財務に精通する人材を海外に派遣して事業を管理し、育成する方法も選択肢の一つです。大塚HDの中にグローバルビジネスサポート部が発足し、グローバルガバナンス強化に向け、進捗していると感じます。またグローバルガバナンスにおいてリスクマネジメントは非常に重要です。今後さらに機能を強化してもらいたいと考えています。

高木
これまで各事業会社の経営は、それぞれの主体性や発想を重視し、ある程度の自由度を許容してきました。またご指摘の通り、大塚はかなり早い段階から積極的なグローバル化を進めてきましたが、当時は外資規制などがあり、なかなか日本主体の経営を現地に持ち込むことができない背景がありました。昨今さまざまな国においてグローバル化が進み、ガバナンス体制の整備もやっと進んでいる状況にあります。がん事業や中枢神経事業など、医薬の治療領域別には、グループ横断的なアセットの共有が進んでいます。輸液事業においても大塚製薬と大塚製薬工場の協業で展開しています。大塚グループの持続的な成長のために、グループガバナンスをより強化すべきステージにあることは認識しています。モニタリング機能も強化し、事業会社と連携しながら体制の構築を進めています。

松尾
歴代の経営陣が繋いできた事業に対する考え方、創造的なことを実証し、努力を惜しまない体制は、事業がどれだけ拡大しても多様化しても、受け継いでいかねばならないことだと考えています。今後のグループの在り方については、組織化と再現性が重要だと考えています。成功事例に拘るのではなく、組織としてあるべき姿を再現できる体制の構築が必要です。
取締役会の体制についても、経営の監督、グループシナジーの最大化、およびグローバルガバナンスの観点から、当社グループのステージや目指す方向に合致した姿に進化・変化していく必要があると考えています。

(4) ニューノーマルな社会における当社の役割と、サステナブルな社会の実現に向けて

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、社会の在り方や人々の生活様式に大きな影響を与えました。今後のニューノーマルという時代における機会とリスク、「独自のトータルヘルスケア企業」としての当社の役割や今後の課題について、ご意見をお聞かせ下さい。

また、昨今、サステナビリティへの貢献を求める声が高まり、企業の社会的責任がより一層問われています。当社はかつてより、社会課題の解決に向けた事業活動を通じて、企業理念のもと、自らの持続的な成長と、健康でサステナブルな社会の実現を目指していますが、今後の目指すべき方向性や課題等について、ご意見をお聞かせ下さい。

松谷
新型コロナウイルスの蔓延はまだ収束が見通せず、各企業に大きな影響が出ています。このパンデミックが収束したとしても、個人の生活も社会の状況も、以前とは全く違うものになるでしょうし、企業にもそれに応じた変化が求められるでしょう。
最も大きな変化の一つが情報化です。以前より進捗はありましたが、それが実際に高齢者から子供に至るまで急激に浸透したことが、一番のインパクトかと思います。それは企業にとって全てのサプライチェーンに影響を及ぼすものであり、いかなる状況においても対応できるよう、先取りした準備が必要になると思います。目に見える一次的な影響に対する対応は既にどの会社もやっていますが、二次的な影響、三次的な影響にまで対応するための、柔軟な体制をとっていく必要があるでしょう。
サステナビリティについては、これまでの企業が実事業の余力で社会貢献を行うという考え方から、今は社会の中で生きる企業として、社会の持続性そのものが企業の発展につながるという考え方になっています。大塚グループとしても、社会の持続性を目指した方向に企業活動そのものを変えていくということが求められるでしょう。社会の持続性と企業の発展にもなる接点を見つけることは容易ではないですが、中長期的にそれなくして企業の発展はないと考えます。

青木
「独自のトータルヘルスケア企業」という言葉は大変魅力的であると思っています。多くの人は、健康で長く、楽しく、美しく生きたいという思いを持つのではないかと思います。正に大塚はその目線に沿った経営を行ってきており、今後もサステナビリティを実現しながら、その方向性は継続すべきと思います。大塚の強みは、医療関連事業の事業体制や収益がしっかりしていること、また、世の中の人々のためになるという製品づくりに対しては、「ポカリスエット」「カロリーメイト」のようにねばり強く取り組める体質があることです。これからも予防の観点での製品がさらに求められると思いますので、NC関連事業において予防の観点に重点を置いた製品づくりに注力してほしいと考えています。

三田
現在は医療関連事業が収益の主体となっていますが、NC関連事業においても近年は収益力も安定し、食品事業のブランドも国内ではプレゼンスが高いです。社会の流れとして、健康に対する意識が高まっている中、大塚グループの広いポートフォリオと、長期の時間軸での製品・ブランド育成は大きな強みと考えます。包括的なヘルスケアソリューションを提供できる大変ユニークな立場にある数少ない企業です。会社の戦略自体がサステナビリティの考え方に沿っているものの、すべての製品や事業をずっと継続することは、この変化が激しい時代、難しい側面もあります。新たな製品・サービスの開発やデジタル活用において投資も必要になるでしょう。短期・中期・長期に分けて、何にフォーカスをするのか。先を見据え思い切った投資もする一方で、時代の変遷で需要がなくなっていったものについては、整理も必要かもしれません。短期志向になるという意味ではなく、先を見据えたビジョンと戦略を大塚HDとしては持つべきと考えています。

関口
大塚はOtsuka-people creating new products for better health worldwideを企業理念としており、それに沿った事業活動をしていれば、自ずと人々の健康や社会のサステナビリティに貢献できていると考えます。また大塚には短期の結果で判断しない長期的な時間軸の考え方が、元々備わっています。
大塚が展開するトータルヘルスケア企業としての事業範囲は、新しい時代においても極めて重要で、予防や未病の概念、一人ひとりの健康管理への取り組みは感染症対策にも通じます。
また、この新型コロナウイルス感染拡大の体験を経て、確実にかなりの業務・機会がデジタルに置き換わっていっています。これらをどううまく捕まえていくか、プロモーションや新製品開発など、単なる効率化ではなく、新しい時代ニーズをデジタルにより取り込み、いかに製品・サービスとして展開できるかが非常に重要であると考えます。

松尾
デジタル戦略については、受け身ではなく、我々としては次のステージに行くために、他社に先んじてやるべきことと捉えて取り組んでいます。次の中期経営計画では、コアな戦略の一つとして打ち出すことも必要でしょう。サステナビリティは、事業活動として当然に認識すべきことであり、2016年に国連グローバル・コンパクトにも署名しました。持続可能な社会に対して、企業として果たすべき責任を果たし、かつ、魅力的な会社でなければ、人も集まってきません。但し、収益の基盤がなければ長期的な視点も持てないため、足元の業績にもコミットしつつ、中長期の成長を見据えた投資もしていきたいと考えています。大塚は、課題を見つけて克服し、他社とは違う発想で先を見据えることができる会社です。今後も生きた会社、アクティブな会社であり続けるよう、我々も努力していきます。多様な業態、多様なマネジメント人材の中では意見が食い違うこともありますが、同じでは意味がない。意見をぶつけ合いながら、次のステージに立てるように布石を打ち、再現性のある組織体にしていきたいと考えています。

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