社外取締役メッセージ

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社外取締役座談会
「これからの価値創造を取締役会はこうして支える」

今回は、「これからの価値創造を取締役会はこうして支える」をテーマとし、座談会形式で、長期ビジョン・新中期経営戦略・マテリアティ策定に取締役会がどのように関わり、今後その実現にどのように貢献するかを各社外取締役に語っていただきました。

座談会
大塚グループの未来像:事業多様性から生まれる新たな価値

松谷取締役 大塚グループは、企業理念「世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造する」にある通り、人々の健康を守るために非常に幅広い分野で事業を行っています。人の健康にはさまざまな側面があります。病気のときに必要なのは薬ですが、健康なときには食品やサプリメント、睡眠などが必要です。大塚グループでは、医薬品のノウハウを食品の分野に応用して安全性や有効性を追求するなど、それぞれの事業の相乗効果が発揮されています。私は、複数事業を展開し、コングロマリットプレミアムを追求していくことが大塚グループの進むべき道だと考えています。
関口取締役 大塚グループのさまざまな会社においてシナジーが発揮できているものの、シナジーが発揮できていない企業が一部あるという点は課題ではないでしょうか。大塚はこれまで素晴らしい成果を残してきたものの、すべてがロジカルに成されてきたわけではなく、一種のセレンディピティによって成果を残してきた部分もあると思います。今後、よりグループの企業価値を高めていくには、成功の再現性が必要です。外部の視点で見ると、シナジーが発揮できていないところは資本効率に課題があるように思えます。この点において、より企業価値を高められる領域に資源を集中するようなポートフォリオマネジメントができるようになれば、市場からさらに高い評価が得られるのではないでしょうか。
青木取締役 私は商社出身のため、大塚グループのように多様な事業を展開している会社の経営のしづらさ、分かりづらさは理解しているつもりです。しかし私の経験から言えば、これは変化への抵抗力が強い事業形態とも言えます。大塚グループの場合、ウェルビーイングを目的としたコングロマリットを目指す中で、堅調に伸長してきているのがNC関連事業です。これは、楽しく健康に生きるために「健康を科学する」事業で、大塚ならではの取り組みだと考えています。今後はさらにその先、さまざまな研究の成果を活かして、健康維持や予防の観点での食品などの新しい製品を開発する余地があると考えています。大塚はとても将来性の高い会社であることをぜひ皆さまに理解していただけると、うれしく思います。
三田取締役 アナリストの視点、グローバルの観点から見ても、大塚グループは非常にユニークな会社です。医薬品を中心にNC関連事業や食品、さらに化学や倉庫など多彩なポートフォリオを持っています。業種によってリターンが異なるのは当然のことですが、多彩なポートフォリオを活かしてそれぞれの事業を伸ばしていかなければならないということは、皆さん同意見だと思います。
大塚にはファーマバイト社など、多くの名前の知られたグループ会社がありますが、大塚グループの企業だと知られていないことに驚きます。大塚グループ全体のブランディングを強化し、子会社間のグループ意識を高めていく必要があります。多くのロイヤルユーザーを獲得し、信頼されるブランドを数多く持っているのですから、それらをグループ全体の総合力として企業価値を説明していくべきだと考えています。子会社の個別の取り組みのみでは、財源やノウハウに限りがあるかもしれません。子会社同士が連携して総合的に取り組めるようになれば、非常に良いサイクルが生まれてくるのではないかと思っています。
北地取締役 もともと大塚グループは、精神・神経領域やがん領域など、治療法がなければ非常に困る人々がいる領域に製品を提供している、社会的意義の高い会社です。人間は、生きているとき「未病」の状態であるという考え方があります。「未病」とは、健康な状態から亡くなるまでの間にはグラデーションがあり、どこからが病気かという境目がないことを言います。この「未病」の段階のすべてに対応するのが大塚だと、私は考えています。保険制度が日本とは異なる米国では、「未病」のまだ早い段階で、不足している栄養素を補給したり運動をしたりといった調整をしています。構造主義*1の大家、レヴィ=ストロースは、「日本は東洋の社会的健康の規範となり、西洋の精神的健康の規範になる」*2と述べており、私はこの「日本」は「大塚」と読み換えてもいいのではないかと考えています。

*1 1960年代の言語学理論を背景に、社会や民族、国の在り方によって、それぞれの特徴があるという考え方
*2 レヴィ=ストロース 「L’autre face de la lune: Écrits sur le Japon(月の裏側:日本文化への視角)」より

イノベーションを成功させるための企業文化と人財育成の重要性

北地取締役 イノベーションというものは、空から急に降ってくるものではありません。高いアンテナを張って、イノベーションを呼び寄せた際にその種をきちんと育てられるような土壌や栄養が必要で、ここでいう土壌とは企業文化のことです。かつて、NASAのこれまでの開発では研究開発費の70%は失敗のために使われているという話がありました。努力をしない中でイノベーションは生まれません。日常的にさまざまな経験を蓄積し、日頃から疑問に感じた点を育成していく土壌が必要です。大塚は以前からその土壌の育て方が上手だと感じており、ぜひその文化を継承していただきたいと思っています。もう一つ大切なのは、研究開発を継続し、イノベーションの種を育てるための多様な事業からの潤沢な営業キャッシュ・フローです。
三田取締役 イノベーションを育てるためには、土壌とともに、それを見出して育てるための人財も必要です。どれだけ良いものを作っても、それが日本のみならず、グローバルでも正当に評価され、理解されなければいけません。医薬品に関してはグローバルで展開していますが、NC関連事業は、グローバルでは日本におけるような存在感を示すところまでは来ていません。
第4次中期経営計画の期間中には、さらに製品数が増え、会社の規模も大きくなっていきます。グローバルに市場をつくって大塚の価値を最大化していく大切な時期に入ってきたと考えています。各子会社にも資金力はありますがuRDNに取り組んでいるRecor Medical社のような将来の可能性を秘めた会社にも資金を投入できるのは、ホールディングス体制の強みです。人財については、パートナーシップを活用することも大切です。ブランディングやマーケティングについても、いいものだから分かってもらえるだろうではなく、大塚のネットワークを活用してアピールできる余地はまだまだ多く残されていると感じています。
青木取締役 第4次中期経営計画が2024年からスタートしますが、その先を考えたとき、世の中の変化が激しい時代において、大塚をどういう会社にしていくのかを議論し、目標を定め、それに向かって走っていかなければなりません。MLBの大谷翔平選手も活用している、目標から何をすべきかという分析を行うマンダラチャート*3という手法を、大塚グループでも取り入れています。大塚では、マンダラチャートを活用して、各従業員が5年先、10年先のゴールを定め、それを実現するための経営を考えています。そこで人財の育成や資源の集中の必要性が見えてきて、事業再編の必要性も出てくるかもしれません。そういう意味では、私は中長期のビジョンや第5次中期経営計画、そしてさらにその先を楽しみにしています。

*3 思考を整理し、目標を達成するための具体的な行動目標を立てるための9×9のマス目の表。中心から目標を広げていくことで、思考の深掘りを行う

関口取締役 私は、大塚の価値創造を拡大していくには、やはりシナジーの活かし方になると考えています。営業や生産、研究開発といったバリューチェーン単位でのシナジーもあれば、科学・技術や市場・地域、DXやAIといったところでも、各社が今まで以上に連携したら、何か違うシナジーが生まれるかもしれません。取締役会においても、各社の説明では各社にとっての最善の説明を受けますが、それがホールディングス全体の最適性とベクトルが合わないことがあります。理念や文化、これまでの成功の歴史など、大塚ならではのしっかりした土壌があるので、それらのベクトルをどう合わせるか(もしくは、敢えて合わせないか)ということを議論・検討する場や組織をつくるといった工夫をしてみてはどうかと考えています。もう一歩先を言うと、グループ外の会社も含めてシナジーを見出し、提携や買収も視野に入れて価値の最大化を図ることもできますね。これからは、それをどう組織化して再現できるか、という段階に入ってきています。
松谷取締役 第4次中期経営計画を進めるにあたって重要なのは人財です。企業とは人の集まりで、人財をどう組織的に育成していくかという点が課題になります。バリューチェーンの各段階で専門性を持った人財が存在し、現場から上がってきた人が経営者になります。あまり安定的・同質的な経営陣では新しいアイデアや成長の機会を逃す可能性があり、外国人も含め、現場を知っている多様な人財が経営層に存在することが大切だと私は考えています。
三田取締役 大塚グループには多様な人財がいますが、子会社同士の人事交流をもっと活発に進めてほしいと思います。2~3年、海外も含め別の子会社に行くような人事異動があると、お互いの事業に対する理解が進み、いい経験になりますし、人が実際に交流することでグループとしての結束力も強まるのではないでしょうか。
北地取締役 これまでは企業経営の価値は、間接金融、会社の長期存続、従業員、株主など、財務諸表のどこかに強く関係する利害関係者にフォーカスされてきました。しかし、これからは株主が安心して保有できる多様性と長期的な価値形成を目指すことが資本コストに良い影響を与えます。そのため現在は、パーパス経営やESGといった考え方が主流となり、投資家、従業員、社会という多様なステークホルダーが重視されています。中でも、従業員をどのように組織化していくかを考えると、人事交流も一つの答えでしょう。さらには、子会社の独立やM&Aによる取得といったダイナミズムの中で、組織化の新しい定義が大塚の中でできていくと考えています。
松谷取締役 各社同士の人事交流は客観的に見るとまだ低調なので、今後活性化させていかなければならないと考えています。

意思決定に向け、議長主導で自由闊達な議論が行われる取締役会

北地取締役 取締役会に限らず、情報共有が積極的に行われていると感じます。会社からの情報に加え、各社外取締役からもさまざまな情報を提供いただいています。例えば、経営会議の資料や、青木取締役からは、研究所がまとめた世界の経済情勢の資料を毎月提供いただいたりしています。
三田取締役 取締役会自体も、かなり自由な発言が行われていると思います。特に議長を務める樋口社長から意見を求められることが多く、フリーディスカッションの時間が多いのが大塚の取締役会の特徴だと思います。
関口取締役 取締役会での発言の半分以上が社外取締役の発言ですね。
北地取締役 会社法では、取締役会は決議事項と報告事項に関して決議する機関だと定められていますが、資本コストや財務の効率性といったことも議論の対象となります。その点で、定型的な取締役会とはイメージが異なると感じています。
青木取締役 議長の樋口社長が非常に上手に運営されています。各案件に関して時間をかけて丁寧に説明を受けた後、社外取締役がどのように考えるのかを発言させ、そのうえで社内取締役にどう考えるかを聞いています。多くの意見が出ることを社長が求めているように思います。
三田取締役 質問も多く出ており、非常に健全な運営がなされていると感じます。決議に対しても、疑問に思う雰囲気があるとその場で決議は行わず、もう少し時間をかけようと、社長自身が決断します。
関口取締役 「全員賛成だったら決めない」という習慣を持つ国や地域がありますが、樋口社長の考えはそれに近く、必ず議論をして多くの意見を聞いたうえで、それを尊重して決めるという方法を取っているのだと思います。

大塚グループの未来への展望と社外取締役が果たす責任

青木取締役 第4次中期経営計画では企業理念と目指す方向性を掲げています。第4次中期経営計画は期間中に迎える利益の調整局面を乗り切るための施策であり、その先をどう考えていくかということにつながります。それが達成できれば、世界の人々にとってなくてはならない会社、世の中に必要とされる会社になれると考えているので、今後の大塚を非常に楽しみにしています。
三田取締役 繰り返しになりますが、ブランディングの強化がこれから非常に意味を持つと考えています。大塚という企業グループで、従業員が誇りに思って仕事をすることで、社会からも一定の信頼を得られます。会社に対する責任や社会からの信頼を得るための努力をすることが、コンプライアンスの醸成にもつながります。従業員が責任とプライドを持ってグループの発展に尽力する体制づくりを支えていきたいと思います。
関口取締役 第3次中期経営計画は当初の目標を上回る結果となったものの、この先医薬品のLOEの課題も待ち受けています。そのような中、2023年は会社として大きく前進した年だと考えていますが、今後さらに環境が目まぐるしく変化することを見据え、グループ全体の視点から、グローバル人財の育成などを積極的に推進していく必要があると考えます。
また、大塚グループには、「ポカリスエット」に代表されるような、大塚にしかできない潜在的なニーズを掘り起こす製品が多く存在しています。今後も、ニーズや市場をつくるような製品の開発にチャレンジしてほしいですね。
北地取締役 100周年の際、大塚一郎会長が「あってよかった会社」という表現をされました。そして2023年は、基礎的医薬品も提供していることから、「なくてはならない会社」と評価されています。製薬業界の株式市場における評価は低い状況が続いていますが、投資家にどう報いるかを考えながら、「あってよかった会社」「なくてはならない会社」として成長を続けて、企業価値を上げていく必要があります。そのためには、マンダラチャートから逆算経営をする際に、パーパスや、財務・非財務で数値化できるものは数値で見ていく必要があるでしょう。
 気を付けなければいけないのは、収集されるデータの扱い方です。カバーする領域が広くなると、AIなどを活用したデータ分析はやりにくい面が出てきます。例えば、がんの治療薬は非常に個人特性が強く、メタデータ化しにくいものです。また、精神・神経領域の医薬品はデータに関する利害関係が強くなるなど、ビジネスチャンスにしにくいデータも多くあります。そこにリスクがあることも十分に認識しながら、ビジネスを行っていく必要があります。
松谷取締役 社外取締役は、少数株主の代表です。それを大前提に、各ステークホルダーにどう報いていくかが、私たち社外取締役の重要な役割だと考えています。マテリアリティがより具体的かつ明確化されましたが、SDGsを軸にしたマテリアリティの策定方法は非常に大塚らしいと考えています。株主に対する配当に加え、企業としてESGやSDGsに取り組み、大塚として対応できる範囲をマテリアリティとして示し、真面目に着実に遂行しています。直接利益につながらないかもしれませんが、これらの精神があって初めて、利益が生きてくるのだと思います。その精神を失わない限り、「大塚だからできること」「大塚にしかできないこと」という、単なるお金儲けではない価値が出てくると考えています。その価値を株主の皆さまにも理解されるような会社というのが現状であり、目標でもあります。2024年度からは、譲渡制限付株式報酬制度の非財務指標に、サステナブルな企業価値創造に向けた貢献度合いの外部評価(FTSE)が加わりました。今後も、大塚グループの価値向上のため、社外取締役として役目を果たしていきたいと考えています。

松谷 まつたに 有希雄 ゆきお 社外取締役

厚生省(現・厚生労働省)、国立保健医療科学院長、国際医療福祉大学副学長など、医療福祉の分野における豊富な経験と高い見識および医療全般における高い専門性を有している。

関口 せきぐち こう 社外取締役

三菱商事(株)、(株)ボストン・コンサルティング・グループを経て、ヤンセン協和(株)(現ヤンセンファーマ(株))などでの経営者としての豊富な経験、実績と高い見識、医薬品事業における高い専門性・ネットワークを有する。

青木 あおき 芳久 よしひさ 社外取締役

伊藤忠商事(株)にて経営者としての職責を担い、現在は同社理事を務めるなど、豊富な経験、実績と高い見識、食品業界における豊富な経験・専門性・ネットワークを有する。

三田 みた 万世 まよ 社外取締役

外資系証券会社における企業分析に関する豊富な経験と、それに基づく客観的に企業を観察・分析する高い見識を有している。

北地 きたち 達明 たつあき 社外取締役

公認会計士としての専門性およびリスクマネジメント、コーポレートガバナンス等に関するコンサルティングの経験を持つ。

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