

第3次中期経営計画の進捗状況
計画骨子
第3次中期経営計画期間を「独自のトータルヘルスケア企業として世界に躍進する5年間」と位置づけています。医療関連事業とNC関連事業において、「既存事業価値の最大化と新たな価値創造」、「資本コストを意識した経営の実践」に取り組むことで持続的な成長を維持し、成長投資と株主還元の両立に注力していきます。
第3次中期経営計画中間年度の進捗状況(2021年度実績)
新型コロナウイルス感染拡大や原材料価格高騰、サプライチェーンの混乱などによるマイナス影響を受けましたが、「独自のトータルヘルスケア企業」として多様なビジネスを展開する強みを活かし、これらの影響を乗り越えることができました。
売上収益は、医療関連事業のグローバル4製品およびNC関連事業の主要・育成3ブランドの約900億円の増収により、一部製品の共同販売契約終了の減収を乗り越え、前期比755億円増加の1兆4,983億円となりました。事業利益は、既存事業は順調に成長致しましたが、一過性要因などの費用計上および成長投資を前倒しで実施したため、前期比598億円減益の1,571億円となりました。ROEは6.5%、ROICは5.6%となりました。
第3次中期経営計画中間年度の当初計画は、売上収益1兆5,000億円、事業利益1,600億円、ROE6.0%以上を計画していました。一過性要因などの費用を除いた達成率は、売上収益99.9%、事業利益115.8%、ROEは目標を達成しており順調に進捗していますが、2022年度以降も地政学的リスク、金利や為替変動のリスクなど予測できない不透明な外部環境がもたらす事業への影響を精査しつつ、機動的に対応することにより、中期経営計画の達成を目指します。

2022年度計画
2021年度までに実行した積極的な先行投資などの効果により、医療関連事業のグローバル4製品とNC関連事業の「ポカリスエット」やサプリメントが成長し、売上収益は対前期比517億円増加の1兆5,500億円を計画しています。事業利益は既存事業の継続的な成長と新規上市品の増収が牽引し対前期比329億円増加の1,900億円を計画しています。ROEは対前期比0.7%増加の7.2%、ROICは対前期比1.0%増加の6.6%を計画しています。第3次中期経営計画に沿って進捗する予定です。
企業価値向上に向けた取り組み
(1)ROICマネジメントによる既存事業価値の最大化
第3次中期経営計画において、「既存事業価値の最大化と新たな価値創造」と「資本コストを意識した経営の実践」を大塚グループ全体で浸透させ、既存事業からのキャッシュ・リターンを最大化し、既存事業から得られたキャッシュは、成長分野への再投資と安定継続的な株主還元に適切に配分することを目標として掲げました。
第3次中期経営計画期間は、「資本コストを意識した経営の実践」の導入期間として位置づけており、資本コスト(WACC)を大塚グループ全体で5.5%と設定しました。
資本コストを上回る安定的な事業リターンを確保するための施策として、第3次中期経営計画期間中にROICマネジメントの浸透に注力しています。売上収益の最大化に加え、さらなる経費管理の実践、各事業・製品に適した経営管理の検討、ROICマネジメントの重要施策の一つでもあるバランスシートを意識した効率的な資産・負債管理の運用を浸透させることで、より一層のキャッシュ・リターンを目指します。ROICマネジメントの浸透に関わる個別の実践は以下となります。

既存事業の収益最大化
当社事業の両輪である医療関連事業とNC関連事業の既存事業の収益最大化を目指します。医療関連事業は、中期経営計画最終年度のグローバル4製品の売上収益目標を2年前倒しで達成しました。NC関連事業は、主要3ブランドのさらなる事業規模の拡大および育成3ブランドの製品価値の訴求により成長の加速を目指しています。特にサプリメント事業は、健康意識の高まりとともにブランドや品質に対する信頼性が向上し収益が伸長しています。
既存事業の経費効率化
医療関連事業の既上市製品については、販売管理費率の目標を定め、経費をコントロールすることでコスト最適化を実践しています。第3次中期経営計画最終年度の販売管理費率を約29%に設定し、早期達成を目指します。
NC関連事業は、競合会社が積極的に投資を進める中、大塚独自の製品価値訴求方法で、効率的かつ規律ある経費の使用を実践しています。

コーポレート部門の取り組み
コーポレート部門を中心に全社的な基盤を整備することで、円滑な事業推進をサポートし、間接部門コストの効率化を実践しています。エリアを日本、北米、欧州、アジア、中国の管理体制で横断的にガバナンス体制強化を図りながら、シェアードサービスの拡大、IT基盤の強化、グループ内金融の推進、プロキュアメント機能の最適化を図っています。例えば、グループ内金融推進の取り組みとして、各エリアにキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入しています。エリア内における会社間の資金融通により資金効率を高めることで、外部からの借入金および支払利息を縮小し、キャッシュ創出力の向上に貢献しています。

バランスシートを意識した事業運営
投下資本から見た資産サイドに関しては、事業資産の効率的な運用を意識し、棚卸資産の適正水準維持、運転資本のコントロール、固定資産管理の強化、政策保有株式の定期的検証などを推進しています。遊休資産などの非事業資産は、継続的に事業への有効活用および売却による見直しを実施しています。
調達サイドは、有利子負債の圧縮による安定した財務基盤の構築と資本効率の向上を目指しつつ、外部からの資金調達が必要な場合は、調達コスト、調達に要する時間、D/Eレシオなどのバランス、格付などから総合的に判断し、有利子負債と株主資本の最適資本構成を目指します。
グループ全体でROICマネジメントを浸透させることは、短期的な資本効率の改善だけではなく中長期的な企業価値の向上に重要な施策と考えています。財務面から大塚の企業文化である「大塚だからできること」「大塚にしかできないこと」を実践し続けるための安定した財務基盤を構築することが、イノベーション創出による社会貢献につながると考えています。

(2)新たな価値創造をサポートする財務戦略の枠組み
成長投資資金の源泉
成長投資資金は、原則、事業からのキャッシュ・リターンを源泉としています。また、欧米、日本を中心にCMSを活用し大塚グループ内の資金を有効活用しています。外部からの資金調達が必要な場合に備えて、コマーシャル・ペーパー(CP)、社債、銀行借入、株式発行などを臨機応変に対応できる準備を整えています。調達手段選択の際は、外部格付、財務安全性、調達コスト、調達に要する時間などを考慮して、事業機会を逃さないように実行します。
成長投資資金の配分
大塚グループの投資の考え方は、イノベーションにより社会に貢献することを大切にしており、企業価値向上と社会貢献を実現するための投資案件であれば挑戦し続けます。また、投資の再配分に関して、医療・NC関連事業セグメント内の事業、製品、エリアなどのポートフォリオに基づく配分だけに限らず、両事業セグメントが創出するキャッシュにより相互に支え合う両輪の関係には変わりありません。
過去には、最も収益が最大化した「エビリファイ」の獲得キャッシュは、第2次中期経営計画期間中にパテントクリフを脱却するための医療関連事業の収益構造の多様化とグローバル化の推進だけに限らず、NC関連事業のオーガニックな成長投資にも貢献してきました。
各々の事業セグメントに関して、医療関連事業は、重点領域である精神・神経領域、がん領域、循環器・腎領域における製品・パイプライン強化を目的とした持続的な研究開発投資を実施しています。加えて、「エビリファイ マイサイト」をはじめとする医薬品とデジタルテクノロジーを融合させた新たなコンセプトや、新たなアプローチとなる超音波腎デナベーション治療などの医療機器事業、未充足な医療ニーズへの「新たな価値創造」へ投資を実施しています。また、臨床栄養事業は、日本市場での製造技術・製品品質の改良と合理化による安定的なキャッシュ創出を海外成長市場での展開につなげていくことを目指しており、事業領域別だけに限らず、市場エリア別へのアロケーションも実施しています。
NC関連事業は、主要3ブランドから生み出される安定したキャッシュを新カテゴリーの創出、新エリアへの拡大投資に再配分しています。育成3ブランドは、積極的な投資により製品価値の訴求によるブランド構築と生産・販売体制の強化を推進しています。
医療関連事業とNC関連事業への積極的な投資の結果、第3次中期経営計画期間中も両事業セグメントが収益、利益面で支える両輪の関係にあります。医療関連事業は、独占販売期間満了の影響により収益・利益ともに変動しますが、NC関連事業の継続的な利益創出によりグループ全体で安定的な成長を実現しています。

(3)株主還元方針
株主還元につきましては、安定継続的な配当を行うことを基本としています。配当の継続性と安定性を重視しつつ、成長投資に必要な内部留保や財務状況、最適資本構成を総合的に勘案して配当額を慎重に検討しています。
第3次中期経営計画期間中も短期的な業績変動にかかわらず、安定継続的な配当実施を財務戦略の重要事項の一つとして実施してきました。次期中期経営計画以降の利益成長に向けた成長投資のめど、財務状況などに応じてさらなる株主還元も検討してまいります。
2022年6月29日
取締役 CFO